発信箱:コンタ=永山悦子(科学環境部) - 毎日jp(毎日新聞)
コンタは、たぶん10歳くらいの雑種の雌犬。家は福島県大熊町にある。東京電力福島第1原発の地元だ。
コンタの家族、石母田(いしもだ)正幸さん(36)たちは3月12日の昼過ぎ、町が準備した避難バスに慌てて乗り込んだ。原発事故が一気に拡大したためだ。そのとき石母田さんが、コンタの首輪につないでいたひもを外した。「もう帰ってこられないかもしれない。一人で生き抜け」と言い残して。
家族が久しぶりに一時帰宅できたのは、事故から4カ月もたった7月になってから。家族は「まさか生きてはいないだろう」と考えていたが、自宅に近づくと、庭からコンタが飛ぶように駆けてきた。「よく生きてたなあ」。石母田さんはあふれる涙もかまわず、コンタを抱きしめた。
きっと帰ってくると信じて待ってたんだね。
でもそれでハッピーエンドにならないのが原発事故です。
だが、今もコンタは家族と離ればなれだ。石母田さんは勤めていた会社が休業し、いわき市のアパートに住みながら、がれき撤去などの仕事をこなす。両親と兄家族は会津若松市の仮設住宅に住む。いずれもペットを飼うのは難しい。だからコンタは県が作る福島市内の収容施設に預けられている。県内2カ所の施設に、同様の境遇や飼い主不明の動物が約300匹いる。
石母田さんは2週間に1度、赤い散歩用ひもを手に施設を訪れる。一緒に歩き、会津若松市の家族へ送る写真を撮る。別れのとき、石母田さんはコンタの顔を両手で包み込み、コンタはしっぽを振って応える。離れるのを嫌がり、ほえることもある。「自宅に帰れるのかどうか、国が見通しを明らかにしてくれなければ、どこに生活の拠点を置くのか決められない。つまり、コンタと住む見通しは立たないのです」
家族全員で暮らせる日はくるのか。コンタや他のペットの鳴き声と、石母田さんの言葉が重なって聞こえた。
犬にとって一番の幸せは、飼い主と一緒に居ることです。
早く一緒に暮らせる日が来ることを祈っています。

